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出会いと絆
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『パニック障害』体験記 ~それでも空はひろがっていて、雲は流れていく~

パニック症(PD=panic disorder 、旧名「パニック障害」)という病気を知っていますか? それは、俺にとって 「 恩師 」 です。だから俺は “ 完治 ” なんかより、ずっと先まで歩くつもりです。

『経緯』54 パニック障害と、閉店の時。 



「こんちわー」


店に入ると、俺の目に飛び込んできたのは、
全く知らないおばさんがお客の散髪を行っている姿だった。

『ぽっしぃー』のおばさんは、
その傍らで椅子に腰掛け、お客と談笑していた。





「いらっしゃい。あとね、30分くらい待ってもらえる?」

「あ、はい。じゃあ30分後にまた来ます。」



店内で見た光景が気になりながらも、俺はとりあえず店を出た。

・・さて、30分か。
近くのコンビニで立ち読みでもしてるか・・・。



・・・!

今、マンガなら確実に、俺の頭の上に豆電球がピカっとなっていた(笑)。

・・・そうだ!!
俺はバイクを飛ばして花屋に向かった。







「スイマセン。小さな花束が欲しいんですけど・・・」


ほとんど買ったことはないけど、花って結構高い。
予算は1000円。
低予算のくせに、色に対してはいっぱい注文をつけた。

黄色の花をメインに、
オレンジの花もちょこちょこと。赤い花も少しだけ。
店員の提案で、白い細かい花がついてるやつも、何本か間に入れた。
花はガーベラが多かったか。

それを透明のフィルムで包み、その上から淡い黄色の紙で包んだ。



完成・・・!!

「元気」が咲いているような、
イメージ通りの小さな花束ができた。






俺はそいつを袋に入れ左手首にかけて、
風圧で花が傷まないように、
ハザードを点け超低速で、そろそろと『ぽっしぃー』へと走った。














『ぽっしぃー』に着くとさっきのお客はもういなかった。



「あの、これ・・・・。
 
 ・・長い間、本当にお疲れ様でした。」




とりあえず即、例の物を渡した。

おばさんは、とても喜んでくれた。
「記念に撮っておく」と、ケータイで写真まで撮りだした。
「花束なんて初めてもらったー♪」

「いいなー」
もう一人の知らないおばさんが言った。


知らない人もいたし、ちょっと気恥ずかしかったけど、
あれだけ喜んでくれれば買ってきてよかった。









しばらくして髪を切るために椅子に座った。
そんなハッピーなシーンの後でも、やっぱり不安や緊張はやってきて、
鼓動がいつものように速くなっていった。

そして、やはり知らないおばさんが俺の髪を切り始めた。




「もう手が上手く動かなくてね。
 何日か前から友達に来てもらって、代わりにやってもらってるの。」

最後まで店に立つことができなくて、
おばさん、どんなにつらかっただろう・・・・・。







切ってくれているおばさんも、とても明るくやさしい感じの人だった。

傍らに腰掛けた『ぽっしぃー』のおばさん、
切ってくれているおばさん、
二人の声は明るく楽しげで、いつもにも増して恐怖感は和らいでいった。





そんな談笑の中で、

「私たち、同じ病気でがんばってるんだよねー。」

『ぽっしぃー』のおばさんは、
パニック障害のことを、自ら明るく話し始めた。


切ってくれているおばさんは、パニック障害のことは初めて聞いたようだった。
そんなに詳しく話してはいなかったけど、
パニック障害のことをこんなにさらっと話せるなんて・・・。
俺は少し驚いた。

と同時に、『ぽっしぃー』のおばさんはパニック障害のほうは
大丈夫かもしれないな、と思った。








そんな明るく楽しい雰囲気の中、
ついに『ぽっしぃー』での最後の散髪は終わった。


レジで会計を済ませたタイミングで、
俺は準備してきた「それ」をやや緊張しながら
『ぽっしぃー』のおばさんに渡した。

「それ」は、
俺の名前、住所、電話番号、ケータイのメールアドレスを書いた
小さな紙切れだ。


「もし万が一、パニック障害で何かあったら連絡ください。
 出過ぎた真似かと思いましたが・・・。
 俺のほうが全然年下ですけど、
 パニック障害に関しては多少、経験があるので・・・・・。」

初めてパニック障害の人に会って、
今までにない感情が生まれていた。
だから、余計なお世話と思いつつ渡してしまった。



「ありがとう。・・・えーと、私も連絡先教えたほうがいいのかな・・・?」

少し戸惑っているようだった。
当然だろう。

「いえ。そういうのじゃないんで・・・。
 変な気遣いとかも要りませんから。
 もしも、“何か”あったときだけ連絡ください。」


俺はそう答えたけど、
“何か”ってどういうことだか、自分でもよくわかっていなかった。

ただ、この不思議な縁を大切にしてみたかった。








「本当にありがとうございました。」

「お互い、絶対がんばろうね!!」


最後に、励ましと感謝の言葉をたくさんかけ合った。
俺は気が済むまで何度も言葉にした。






「あ、そうだ。何か店の物、好きなの持っていって。」


俺は店内をぐるっと見渡して少し考えた。

「・・じゃあ、これ、もらっていいですか?」
「いいよ。持っていって。」

レジの近くに飾ってあった、
木でできた、小さくてしっぽの長い、赤い猫の置き物をもらった。













店を出た。

『ぽっしぃー』のおばさんと、
切ってくれたおばさんは、
店の入り口のとこで、ずっと俺が帰るまで見送ってくれた。

俺は二人に一礼し、バイクで走り出した。








たぶん、俺が『ぽっしぃー』の最後の客だったと思う。

それも何だか光栄でうれしかったし、
不思議な縁をますます感じた。

























今、『ぽっしぃー』は隣のつぶれた店とつなげられ、
歯医者になっている。

当然といえば当然だけど、
その後、『ぽっしぃー』のおばさんから連絡はない。









おばさん、元気にしてるかな。








赤い猫の置き物

















<178>

category: PD発病からの『経緯』。

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