『経緯』11 パニック障害と、失・好奇心Ⅱ。
2011/11/30 Wed. 19:49 [edit]
2007年、5月9日。
その日は、朝からすっきりと気持ちよく晴れていた。
5月は、バイクで走るには本当に気持ちいい時期だ。
やわらかくて心地よい風が最高だ。
だから、5月は走らないともったいない。
その日の朝はなんとなく気分もよかったし、
思いつきと勢いで出発した。
「バイクは大丈夫なんだ」
そう、自分自身に証明したい気持ちもあった。
走り出してみると、
その日は“5月の心地よさ”というより、
夏に片足突っ込んだような日差しの強い日だった。
高速道路をゆっくり走り、1回休憩もいれて、
3時間半くらいで目的地に着いた。
久しぶりの長距離走行だったから少し疲れたけど、
十分に気分はよかった。
目的の場所を楽しく観てまわって、そこの人と長く立ち話をした。
その後、遅い昼飯を食いに定食屋へ。
なんかイマイチ食欲がなかったので、食べやすそうな「とろろご飯」のみを注文。
ところが、
待ってる間に頭が「ぐわ~ん」としてきて、
鼓動も速くなり始めた。
心の中がめちゃくちゃになって、どんどん気持ち悪くなった。
とろろご飯がきたときには、どうしようもなく気持ちが悪く、
見てるだけで吐きそうで、ひと口も食べられなかった。
「少し店内で休ませてもらえませんか」と頼んだ。
「悪いけど、これから店を閉めるから」と断られた。
「救急車、呼ぼうか」と言われたが、断った。
近くで休める場所を聞いて、金払って店を出た。
歩いて、教えてもらった近くのスーパーの休憩所へ。
椅子に座って必死に耐えていたけど、
まわりのおばさんや子供たちの、話す声や笑い声が、
頭の中でぐるぐるまわって恐ろしい音で響き、
今までの発作でも経験したことのない巨大な不安感に押しつぶされた。
知らない町で、誰ひとり知ってる人がいないというだけではない、
とてつもなく大きくて恐ろしい不安感だった。
自分だけが別世界にいて、
まわりの人たちは俺のことを、誰も見えていない感じがした。
「これは本当にヤバイ」と思い、
動けるうちに、
正気でいられるうちに、
人に聞いて病院に行った。
出先で病院に行くなんて初めてだった。
診察中、首ががくがく震えて止まらなかった。
「特に悪いところはないねぇ。疲れてるのかな・・」
と、言われた。
診察後、ありがたいことにベッドで休ませてくれた。
点滴をうけながら2時間くらい眠った。
目が覚めると、少しラクになった気がしたので家に帰ることにした。
もう日が暮れる時間だった。
走り始めてすぐに暗くなり始めた。
あたりが暗くなることに恐怖を感じた。
闇が増すたび、不安感につぶされそうだった。
こんな感覚も、また初めてのものだった。
・・・無事、辿り着けるのか・・・・・。
何度も何度も恐怖と不安に飲み込まれそうになりながら、
来たときよりも、さらにゆっくり、
何度も休憩をいれて、
余計なことを考えないように
運転しながら思いつく限りのブルーハーツの曲を歌って、
・・・なんとか、命からがら帰ってきた。
もう、「行きたい」という気持ちより、
恐怖感が何十倍も上回るようになった。
これで完全に「ツーリング」を失った。
もう一度、大好きなツーリングに行くまで、
この日から3年半もの時間が流れることになる。
(つづく。)
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category: PD発病からの『経緯』。
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